山本宣治代議士刺殺

旧労農党員京都選出代議士、山本宣治氏(39)が、宿泊先の神田の光栄館で刺殺される。犯人は大阪市七生義団の団員黒田保久二(37)。午後9時20分ごろ、黒田は山本氏を訪問、、面会を求め、入浴中だった山本氏は一度は断ったが、黒田が強引だったため面会に応じ、自室に招じた。黒田は、山本氏にいきなり、

一、直ちに衆議院議員を辞職する事。
二、選挙民を欺き赤化させたる罪。
三、治安維持緊急勅令に反対し赤化運動を容易ならしめた罪。
四、開院式当日不敬事件を引き起したる罪。
五、以上の理由によって断然代議士を自体し赤化運動をやめる事。

という五カ条の斬かん状を突きつけ、両者の間で約20分間の論議がなされ、相当語気荒くなったのか、当然黒田が懐中から短刀を出し、山本氏の左けい部を突き刺した。逃げようとした黒田に鮮血に染まった山本氏ははしご段で飛びかかったが、深傷のため力およばず、更にその際心臓部を刺され、はしご段から転げ落ちて階段の板の間に打ち倒れた。黒田は犯行直後に自首。山本氏は応急手当てを施したが、同10時40分に絶命した。

 

山本代議士の横死を悼む     美濃部達吉
(前略) 山本君は無産政党の最左翼を代表せられた唯一人であつてその思想の傾向は余りに過激であり、我々の到底賛成し得ないところであつたにしても、尚その主張が真面目な信念に出で不純の動機を含んだものでなかつたことは、一般に認められて居た所で、しかして此の如き真面目な信念から出た主張は、如何にそれが賛成し得られないものであつても、尚他山の石として敬聴すべきものである。今この人を失ひ、再び永久に壇上にその人を見ることを得なくなつたのは、啻に最左翼のためのみならず、又啻に無産政党のためのみならず、実に議会全体のためにも政界一般のためにも大なる大損失といわねばならぬ。 (後略)
(帝国大学新聞・3・1)

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