治安維持法改正

二日にわたる枢密院本会議での討議の結果、第五十五議会で審議未了の治安維持法改正を可決公布(死刑・無期刑を追加)。今秋の御大典を控え政府の押し切り成功。

 

枢密院本会議での江本千之氏の反対演説
今日共産党事件の如き不逞の徒あらばこれに対して極刑を科することは当然であるが今日この際本案の如き緊急勅令を必要とするや否やについては幾多の議論がある。殊に本案の提出について政府の説明によれば緊急勅令案として御諮詢を仰ぐ理由は更に認むることは出来ない。即ち政府は憲法第八条により公共の災厄を避くるためであるというが、もし政府のいう如く緊急やむべからずとすれば政府は何故に特別議会において本案の通過について最善の努力をつくさなかったか、政府は当時唯政争に没頭して本案の通過に対して何等つくすところなく、殊に本案が審議未了の運命に会せんとするも政府は会期の延長を奏請せず、議会終了後も50日の久しきこれを高閣に束ねて更に本案を処理せんとせず、漸く廟議をまとめて本案を提出したがその説明は支離滅裂ごうも要領を捕そくすることが出来ない。もし政府にして真に公共の災厄を避くるため本案を必要とすればよろしく臨時議会を招集して議会の協賛を求むるこそ機宜に適した立憲的態度というべきであろう。又本案を今非常立法によらずとも次の通常議会まで待って改正するも遅くはない。かくの如く本案はその内容に付ても形式手続にも欠陥ありと信ずるが故に余は本案に対して反対するものである。

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