陪審裁判

大分地方裁判所で開かれた我国最初の陪審裁判――藤岡亀次(33)に係る殺人未遂被告事件の第2日目の公判は24日午前9時から引続き開廷した。まづ裁判長の陪審員に対する説示にいり、被告の犯罪につき検事は殺意を認め被告はこれを否認して単に傷害の事実を認めて居る本事件の唯一の問題は殺意の有無にある。法律上より見れば殺人未遂は死刑又は無期若くは3年以上の懲役となつてゐるが、単に傷害とすれば10年以下の懲役又は科料に処せらるる重大な関係となるからと特に殺意の解釈について詳述し証拠について説明をなし、予審で被告は殺意を認めたのはこの場合証拠にならぬ。ただこの法廷に現れた事実のみを証拠としなければならぬと前日の被告の答弁、証人の陳述を再び説明し尚参考人として一般犯罪の動機や飲酒と犯罪等の関係を述べた後裁判長は陪審員に対して次の諮問をした。

(主問)被告に殺意はあつたか
(捕問)殺意はなかつたとすれば単に傷害の目的で斬付けたものであるか

の2問をだした。かくて同10時半陪審員は評議室に入り極秘のうちに評議した結果、同50分決をとり陪審員長は答申書を作成して厳封して裁判所に提出した。11時再開裁判長はこれを開封書記をして朗読せしめたが主問の殺意に関する陪審の答申は『然らず』となつてゐて殺意を認めないことになり、捕問の単に傷害の目的にて斬付けたものであるかとの問に対しては『然り』の答申であった。
裁判所側ではこれを至当と認め、かくて陪審の任務は終了し退廷した。次で河合検事は第2次弁論に移り被告の素行にしん酌さるべき点があり、情状酌量の上刑法204条を適用し懲役6ヶ月を求刑した。次で加藤弁護士は被告の前途のため刑の執行猶予を求め11時半閉廷した。
(大阪朝日)

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