北一輝逮捕

宮内省怪文書事件の中心人物北一輝並に辰川龍之助両氏は17日東京地方裁判所秋山予審判事の召喚を受け長時間取調べの上令状を執行、夕刻市ヶ谷刑務所へ収容された。
探聞するところによれば両氏は昨年6、7月頃株式会社十五銀行の不安な営業状態と宮内省との関係を記載した文書を関係者に配布し銀行方面から45万円の沈黙料を収受したとの事実に基く由だが、当時この事は司直の探知するところとなり古山検事取調べの結果犯罪事実が明瞭となつたが、時たまたま同銀行は破綻に瀕してゐたので検事局も財界の同様をおそれ暫く伏せてゐたが、先頃石郷岡検事から両氏を恐喝罪として起訴してあつたので両氏にとっては今回の収容は以外であつたらしい。なほこの事件については市来元日銀総裁が仲裁役をつとめた事実があり、某政党領袖も裏面にて策動したといはれてゐるから取調べの進展につれ証人又は参考人として召喚される模様である。
(東京日日)

パラシューターの死

和歌山実業新聞及び和歌山県伊都郡橋本町主催の民間飛行大会開催中、橋本町木戸河原で当日の呼び物である落下傘降下の演技に移りパラシューター原田隆治氏(26)が乗池飛行士操縦の飛行機から降下を試みたが余りの低空であったため、着陸までに十分落下傘が開き切れず、遂に原田氏は大地に体を激突した上風にあおられて約7、80間引きずられて惨死した。原田氏はわが曲乗パラシューターとして有名であったがパラシュート界最初の犠牲となった。

中村遊郭張店復活

中村遊郭ではさる8日組合事務所に役員会を開き更に9日総会を開催の上左記5項について協議のうえ県保安課へ認可を申請した。

一、張店の復活
一、貸座敷と芸妓置屋兼業
一、花代一銭値上げ
一、娼妓前借金の利子撤廃
一、年妓制度の設置

右の中張店は娼妓に客の選択権を与へるといふ意味で復活しガラス張の中で張店をなすものであり、また貸座敷に芸妓置屋の兼営は従来郭内では禁止されてゐた貸屋敷でも芸妓を抱へ得るやうに旧遊郭時代の如き制度に復活させるものである。年妓制度はこれまですべて花分けであつたものを年期でも抱へられるやうにしたもので楼主側には非常な利益をもたらす。なほ花代値上げは従来の1本12銭5厘を13銭5厘となし、そのうち2銭5厘を席料、5銭を借金の返済、1銭を楼主の収入となし、その代りに娼妓の前借金に対する利子を撤廃するといふのである。右の諸項はかねて伝へられた如く県との間に諒解あり、交換条件として遊郭側は取締稲川辰蔵以下こぞつて政友会に入党するはずである。
(都新聞)

アルスの版権侵害

日本橋区本石町の博文館は去る8月中旬、小石川区表町アルスに対して版権侵害に基づく2万5,000円の損害賠償請求訴訟を東京地方裁判所に起こしていたが、8日午後5時に至り遂にアルスの在庫品(価格2,000余円)を仮差押えの処分に付した。その理由はアルスは本年7月頃巌谷小波氏に交渉して「日本児童文庫」の中に氏の旧作に係るお伽噺を入れ最近4版の発送を終えて巌谷氏には印税1割を贈っていた。然るに右のお伽噺は今より10年前博文館が発行した「日本お伽噺集」にあるもので版権は当然、博文館にあるに係らずアルスが無断で転載したというのでこの行為に出でたものである。

モガの断髪禁止

9月
東京市では各局課に勤める数100名のタイピストその他の女事務員がいはゆるモガ式断髪洋装の厚化粧でしやなりしやなりと登庁するばかりか、中には不良化してその筋のブラツクリストにのせられた者などあり風紀上甚だ面白からぬばかりか世間の非難もあるので、勝助役はこの際綱紀粛正の魁としてこれ等市役所内の不良分子を一掃することゝなり、風紀をみだした証跡の暦然たる者は遠慮なく槍玉に上げて刷新の実を示すべく各局課長に命じて秘密裡に調査を開始したが、中には係長級の者でこれ等部下のモガと温泉に遠出したなどの醜事実が暴露するなど一部では非常な恐慌を惹起してゐる。
またそれと同時に教育局でも新学期早々一部校長の移動を行つて綱紀の振粛を行つたが市内千数百名の女教員中極端な断髪洋装の者があつて銀座街頭を濶歩するモガと判別付かぬやうなものさへあり、最近この傾向が益々甚だしいのでそれが直接児童に反映し或良家の令嬢が断髪をせがんで困つたとの投書、その外男女教員の風紀問題についての当初が暑休明けと共に山をなす有様なので、藤井学務局長はタイピストや女事務員の風紀調査を行ひ市内4,000余の男女教員の素行等につき慎重に調査を開始すると共に、服装殊に断髪の教育上に及ぼす可否撮影等につき調査を開始することとなつたが、この際殊に目立つたモガ式の女教員については服装改善につき厳重な警告を発すると同時にそれでも改めない場合は断然たる処分を行ふと。
(東京日日)