天龍の関西相撲協会

大日本相撲協会は今場所綾櫻、男女の川以下の帰参力士を加へて1年ぶりに芽をふき連日割れ返る大入りに復興気分を漂はしてゐるが、一方天龍以下42名の一団はその中軸をなす多数有力な力士を失ひ、遂に没落するのではないかと思はれたが、さきに天龍一味が組織した大日本相撲連盟(新興、革新両力士団の結合)を解消して新に「関西相撲協会」を設立することに決定し、その第一回旗揚げ興行を来る2月11日から8日間堂ビル前元堂島小学校の市有地を借り受けて挙行することゝなつた。この協会は昔存在した大阪相撲協会の滅亡した原因ならびに今回天龍一味が失敗した理由をつぶさに検討して再びその轍を踏まず、しかも斯界永遠の発展を図るためには東京、大阪、の両相撲協会が完全なる諒解を得て毎年一回東西対抗大相撲を挙行するにありとし、関西協会側では毎年1月5日の本場所以外に秋期にこの対抗相撲を実現すべく希望してゐる。
(読売)

就職戦線、軍国の春

1月
春に魁してインフレ景気の風がさつと就職戦線を吹き渡り今春学窓を巣立つ数万の学生の上にも輝かしい春光を投げて何処も朗かな好景気の声にみちみちてゐる。
東大工学部の卒業生340名の中さすが軍国だけに航空、造兵、火薬の三学科は素晴らしい景気で火薬は9名が全部予約済み、造兵は21名の中17名決定。航空も殆ど満員で各学科共昨年よりぐつと景気がいい。おまけに満鉄から全国各大学工学部に対し29名の申込が舞込みホクホク喜んでゐるが卒業までには全部片付く見込みでインフレ景気の反映を思わしめてゐる。初任給は100円前後。最高125円といふ豪勢振りである。
(読売)

汚職で東京市長代わる

1月18日
東京市の千葉県にある八柱霊園用地買収にからむ汚職事件で、検事局は第三助役十時尊と市保健局長石橋政治が地主の吉田甚座衛門とその輩下石井龍郎から運動費12万円を受け取った疑いで召喚、取り調べた。同日、永田秀次郎東京市長は「一身上の都合」で辞表を提出し引責辞職。

5月8日
牛塚虎太郎氏が第十五代市長に当選。

昭和の女天一坊

1月17日
無一文でありながら大資産家の如く装ひ、巧に資産家を操つて15万円の空邸宅、敷地1,400坪、建物200坪、17間を買ひ取り舊臘(きゅうろう)30日以来住み込み豪著な生活をしてゐた怪婦人が17日午後6時品川署に検挙された。この女は宮城県生れ鈴木しも(36)と云ひ、住んでゐた邸は品川区北品川御殿山3の341元浅野八郎氏(故総一郎翁三男浅野セメント常務)邸で、15万円で買ふ契約をなし、内縁の夫と称する予備海軍特務少尉加藤熊之助(45)と15歳の女児を頭に男女4人の子供との6人家族で住み込み、書生、女中、コツク等数人を雇ひ入れ、家財道具を買ひ込むなどして日清産業合資会社と称するインチキ会社を組織し、巧に世間の眼をごまかしてゐた。<中略>怪婦人鈴木しもは郷里宮城県で高等小学校を卒業後単身満州に渡り同地で労働するうち満州ゴロとなり、張学良等とも交際しつゝ流浪してゐるうち、昨年6月青島で前記加藤と知り合ひ内縁を結んで一緒に内地に帰つた。
(時事新報)

1月20日
張学良、蔣介石も知人だと云ふ過去の彼女の生活は、その明さぬ2人目の夫と共に秘されてゐるが、過去に金には不自由をしない裕福な生活をしてゐた事は事実らしく、その支那語じゃ駆出しの支那通など到底及ばぬ立派なもので詐欺も悪意よりか「自分には何時でも金は出来る」とまだ過去の裕福な時代の夢を見てゐるらしい。夫の加藤は係官に
「妻の過去から考へても、15万円の邸宅位買ひ得る金は出来ると信頼します。留置所に入つてゐては仕方がないが、妻は決して詐欺を働いているんじやなく、金は出来ます」
と妻を固く信頼してゐるところを見れば、従来生活資金は彼女が全部作つたものらしい。
(時事新報)

三原山心中

この日、大島三原山の噴火口に、東京・渋谷の実践女学校専門部生徒が投身自殺。2月12日にも、再び同校生徒である松本喜代子さん(21)が投身自殺。彼女は家出の数日前、父親に「三原山の煙を見たら私の位牌と思って下さい」と言い残していた。「国文科に籍をおき、万葉集的耽美主義だった彼女は、死体をさらすことをひどく嫌っていたらしい」と推測されたが、自殺の原因については、当時、吉屋信子は「昔ながらの同容器における突きつめた死へのあこがれでしょうか」と語った。そして殊に世間の好奇の目を集めたのは、2件の投身現場に同じ同級生が立ち会っていたことだった。そのあと三原山の〝自殺ブーム〟となり、この年だけで944人(男804人、女140人)が三原山に投身自殺した。