早慶戦で水原選手リンゴ事件

10月22日
息詰まるシーソーゲームで全国のファンを熱狂させ慶大の勝利となった、第3早慶野球戦に早慶戦復活以来最初の不祥事が発生。8回裏慶応攻撃の際、岡選手の2盗がアウトになったことで慶応側選手5・6人が斎藤累進に異議を申し立て、なかでも水原選手が同審判に強硬に出たため、腰本監督が選手一同を引き返させた。しかし早大側はこれを憤慨、9回表で3塁手水原選手目がけ早大側スタンドからリンゴを投げた者があり、同選手が引揚げ際にそのリンゴを早大側応援団中に投げ返した。早大側は一時どよめき慶大勝利に終わった試合終了後、早大有志が慶応側選手席に殺到し、「水原を出せ。謝罪させよ」と怒号し始めた。慶大側は「早稲田が応援の指揮棒をぶったくった」と主張し、試合終了の後危うく乱闘にまで及びそうな勢いのまま別れ、それぞれ声明書を発表。早大側は水原選手の謝罪のない以上、指揮棒問題に関する交渉には応じないとし、慶大側は早大のような乱暴者はリーグから出てしまえと抗争化。

11月8日
早慶大学野球部にたいする野球連盟勧告文の内容が、大体慶大側有利で、野球部長の更迭を求めるとは内政干渉だとする早大側はリーグ脱退の公算大。

11月21日
双方共遺憾の意を表明し、解決。

12月
早大野球部監督大下常吉氏が正式に辞表表明。

ナチスの迫害を越えた国際結婚

去る昭和5年渡独、ベルリン郊外の労働者街に居を構へて、ひたすらに研究の日々を送つてゐた左翼文芸批評家の勝本清一郎君(35)は素晴らしい金髪のドイツ婦人を獲得。目下パリに滞在してゐるが、近くスエズ経由で国際的恋愛を甘美しつゝ帰朝、正式に結婚することになつた。この金髪美女はドーラ・シンドラ嬢(23)といふ生粋のドイツ娘、ベルリンのトービス映画録音会社のタイピストであつたが、勝本君が同会社に出入りしてゐるうちに相知り遂に恋愛に陥り今年はじめから同棲してゐたものであつたが、この新婚生活もナチス政府の「ドイツ人種の尊重」の鞭にうたれて決して平和ではなかつた。「ドイツ人の血を守れ」「外国人と結婚してはならぬ」の声に脅かされながらも2人はあらゆる迫害に敢然と闘ひ恋愛同をまつしぐらに進んだ。そしていよいよ結婚しやうとしたが、ドイツ国内ではどうしても許可されないのでまづドーラ嬢を日本に帰化させることになりベルリン警視庁に許可願ひを提出したがそれも不可能であつた。その頃ベルリンに滞在中であつた秦豊吉氏は2人の焦慮に同情、それに在ベルリンの日本人が全部協力して猛運動を開始した結果漸くドーラ場の日本旅行許可証を下付された。かくて黄色人種と結婚する事はユダヤ陣と結婚することよりも迫害するナチス政府を見事克服、恋愛の勝利を謳つて帰国することになつたのだ。勝本君は慶応大学文学部の出身、その尖鋭な批評と端正な相貌でかつて山田順子女史と艶名をうたはれ、更に藤間静枝女史との恋愛は有名なものであつた。
(読売)