「源氏物語」上演禁止

26日から4日間新歌舞伎座で上映予定の劇団「新劇場」によるわが国古典文学の粋「源氏物語」が、突如警視庁保安部から劇全体として社会の風致を害するとの漠然たる理由で上映禁止命令が発せられた。新劇場は紫式部会の名で長文の声明書を発表した銅かい会長藤村作博士は、以下のように談話した。
「折角の画期的な企てを放棄しなければならなくなったことは非常に残念です。どの部分が悪いからこれを削除しろといわれるのならまだしも全体がいけないとなってはどうにも仕方がありません」。

岩槻礼次郎襲わる

民政党総裁若槻礼次郎氏が上野駅で、短刀と書状を持った拳闘家・野口進(27)に襲われそうになったが、すぐさま上野署の保安係に差し押さえられ総裁は無事であった。その後総裁が自邸に就くとまもなく円タクでかけつけた教販の松井治雄(24)も警備の巡査に取り押さえられた。2人は浜口首相暗殺の佐郷屋事件も五・一五事件もロンドン条約に発しているとし、その責任者若槻氏に切腹を敢行しようと相談一決したもの。

里見弴、久米正雄ら賭博で留置

有閑マダムと不良ダンス教師の摘発に当たつてゐる警視庁捜査一課不良少年係は、検挙された和製ジゴロ田村、小島両氏の自供から以外にも知名文士、実業家、有閑マダム、ジゴロ間で常習的に各種の賭博が行はれてゐる新事実をつきとめ、里見弴氏夫妻、結婚10年の祝賀宴を行つてゐた久米正雄氏夫妻、小島政二郎氏愛人の女流作家三河きよさんなどを召喚。さらに川口松太郎氏も自宅から拘引留置され、ダンスホールにからむエロ行状と賭博の両方面の犯罪が暴露。
(国民新聞)

永井荷風『断腸亭日乗』より

十一月十四日。くもりて暖なり。(中略)頃日(けいじつ)市内舞踏場に出入する男女の検挙盛に行はる。斎藤医学博士妻、近藤廉治(近藤廉平男)の妻(樺山伯ノ女)等、警察署へ呼び出されしといふ。

〔欄外朱書〕舞踏場検挙名家ノ夫人多ク捕ハル。

(永井荷風『断腸亭日乗』より)